ホンネで語る歯周病治療
歯周病治療のキーポイント

20071018195422.gif 正確な資料をとること

歯科医院でお口の中の写真をとったことがありますか?歯と歯ぐきの写真は歯周病の治療にとって大変役立つ資料です。歯ぐきの形や色、歯の表面についたプラークや歯石。こういった微細な状態を見逃さないためにはお口の中の正確な写真が大変有効です。

歯科医院で撮るレントゲン写真には大きく分けて2種類があります。パノラマレントゲン写真は1枚で上下左右の広い範囲を見ることが出来ます。もうひとつのデンタルレントゲン写真は小さなフィルムですが、小さなむし歯や骨の微妙な形までくわしく見ることが出来ます。歯周病を評価するためにはデンタルレントゲン写真で歯槽骨の形を正確に診る必要があります。ただしすべての歯とその周囲組織を写すために10枚から14枚撮影する必要があります。

一般的に行われている歯周ポケットの深さや歯の動揺度のチェック
は歯周病の基本的な検査として不可欠です。これに加えてお口の中の写真やデンタルレントゲン写真も欠かせない検査です。

20071018195422_1.gif 歯石をキレイに取ること

「歯石を取る」と一言で言いますが、実際には大変な作業です。
超音波スケーラーは歯石をとるための代表的な器具です(キーンという音で歯科衛生士さんが歯にあててガリガリ歯石を取る器具です)。軽症から中等度の歯周病にとっては超音波スケーラーをうまく使用することでかなりの歯石をとることができます。しかし、中等度から重度の歯周病では歯石除去は大変な作業になります。専用器具(正式にはグレーシーキュレットといいます)を使って人間の手で丁寧に歯石をとり、しかも歯根の表面をツルツルにする必要があります。大変時間がかかり歯科衛生士さんの高い技術を必要とします。
ちなみに深さが6mmを超える歯周ポケットの中の歯石は専門家であっても取り残しが出てしまうというデータがあります。私も、この深さの歯周ポケットを1度きりで完璧にキレイにする自信は・・・ ありません・・・20071022140043.jpg

20071018195422_2.gif  現状をしっかり教えてくれること

「アナタ!歯周病にかかっていますよ」歯医者にとっては便利な言葉です。なにしろ8割以上の成人の方がかかっている病気ですので、そう言っておけばほとんどが正しい診断になります。
また、歯周病は自覚症状の少ない病気です。つまり治療によって良くなっても、あるいはほっておいて不幸にして悪くなっても、患者様自身にはなかなかわかりません
大切なのは、どの程度の歯周病にかかっているのか?治療によってどのくらい良くなったのか?を知ることです。歯周病の治療には患者様自身のホームケアーが大切ですので、自らの状態を正確に知ることが大切なのです。
漫然と歯石をとったり歯をクリーニングするだけでは、残念ながら歯周病はなかなか治りません。患者様の歯みがきのやり方や体質で、同じ患者様の口の中でも歯ぐきの形や厚み、歯ならび、かみ合わせ、詰め物や被せ物・・・歯の場所ごとに歯周病の進み具合を変える要素があります。
高度の歯周病の治療には時間が必要ですが、自分がいったいどの段階にいるのか?ほんとうに歯周病の状態はよくなっているのか?、こういった疑問が当然うまれてきます。
こういった疑問に的確に答えてくれる、またそれを説明してくれる資料を提供してくれることが必要でしょう。

20071018195422_3.gif メインテナンス

歯周病治療の最も大切なキーポイントはメインテナンスでしょう。歯周病の罹患率(なりやすさ)が非常に高いこと(成人の8割以上というとんでもない数字!)は、いったん治った歯周病が再発しやすいことにつながります。残念ながら治療さえすれば、後はメインテナンスフリー、つまりそのままほっておいて再発しない歯周病は存在しません。
歯周ポケットの中ではお口の中の多量の細菌から歯と歯ぐきの継ぎ目を守ろうと人間の身体は孤軍奮闘しています。定期的なクリーニングは、それを助けてあげるために欠かせません。

 
歯肉にやさしいかぶせ物
かぶせ物にとって最も大切なことは?
保険診療でかぶせ物といえば、銀色の金属のかぶせ物(クラウン)を思い浮かべる方が多いと思います。見えやすい部分に銀色の金属色は見た目に劣るということで、あえて自費の白いかぶせ物を希望される患者様もいらっしゃいます。見た目(審美性)は大変重要なことです。お口を開けた時に銀色の金属色が見えると、いかにも歯の治療を行っているとわかるので、思い切って笑えないと感じる方もたくさんおいでです。

では色だけで十分なのでしょうか?

こと歯周病の立場から言えば歯とかぶせ物の適合性、すなわちいかに人工物のふちの部分と歯がぴったり合っているか、またかぶせ物のかたちが周囲の歯や歯肉にマッチしているかが最も重要となります。なぜならこういったかぶせ物は単に見た目が良くて長持ちなだけでなく歯肉にやさしいからです

歯肉にやさしいかぶせ物って?20080413095448.gif
白い歯とピンク色のきれいな歯肉。にっこり笑った口元に白い歯がみえるのは素敵ですが、歯肉が真っ赤に腫れていたり紫色に変色していたりすれば、せっかくの白い歯も台無しです。
歯肉が炎症を起こす原因はいくつかありますが、実は歯とかぶせ物の境目の適合の良し悪しも大きな要因のひとつです。かぶせ物と歯の境目が十分に適合していないと清掃することが困難で、結果的にその隙間に多数の細菌が生息するようになります。不良修復物(修復物とは歯の詰め物やかぶせ物のこと)という用語がありますが、歯周病の原因を歯の治療がつくってしまっているケースがあるのです。

歯肉にやさしいかぶせ物をどうやって作るのか?
歯とぴったりあったかぶせ物、歯肉と調和のとれたかぶせ物をつくるためには多くの解決すべき課題があります。
歯をきちんと削ること、これは歯科医の腕の見せ所です。歯の模型にぴったりあったかぶせ物をつくること、これは優秀な歯科技工士さんの仕事です。工業製品であればこの二人の仕事の精密さですべてが片付いてしまいます。
しかし、実際のお口の中での作業は工業製品のようにはいきません。歯肉は柔かく炎症を起こしやすく、場所によっても、またその時期によっても形や固さが変わります。炎症を起こした歯周ポケットは出血しやすいばかりでなく歯肉溝浸出液という液が常に湧き上がってきます。「歯型をとる」と一言でいいますが、実は大変な作業です。柔かく形の変わり易い歯肉のすぐそばを十分に乾燥させ精密に型どりするためには、ある程度健康な歯肉であることが必要不可欠です。いかに健康で精密な歯型をとることができる歯肉にさせるか、が最重要ポイントであり、そのためにはある程度の手間と時間が必要となります。コストも自然とかかってしまいます。

仮歯だって大事です。
最近の歯科治療では、仮のかぶせ物を長期間使う治療方法も一般的になりました。仮歯なのですが、プロビジョナルレストレーションという立派な名称がついています。仮歯とあなどることなかれ、ちゃんと歯型をとったうえで作るものです。仮歯をつけておいて歯肉の炎症が治まるのを待つだけでなく、噛みあわせや隣の歯との間の空隙についても実際のお口の中で修正していきます。究極の仮歯といえるものです。

白いかぶせ物が自費治療ではありません。歯肉にやさしく見た目にもよいかぶせ物が自費治療の本質ではないでしょうか。

 
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ホンネで語る歯周病治療
歯を抜くべきか?残すべきか?

「歯を抜くべきか?抜かずに残すべきか?」歯科医と患者様との間で常にトラブルの元となる問題です。重症の歯周病患者様を前に「なるべく抜かないで治療ができたら・・・寿命をまっとうしてくれたら・・・」 と考えることがあります。しかし、こと歯周病を治療する立場ではそうはいきません。20071013222435.jpg

予防歯科の重要性がうたわれて久しいため、歯を抜かずに残す」ことは最も重要なこととして考えられています。確かに痛みやその他の症状のことのみを考えれば、現実に歯を抜かなければならない理由」はほとんど存在しません

歯周病は症状の出にくい病気です。たとえ一時的に急性に歯ぐきが腫れて痛みを感じることがあっても、その時期を過ぎれば病状は必ず慢性化します。そうすれば、また痛みも何もなく過ごす事ができます。つまり、何もしなくても抜かない治療は可能です。しばらくほっておけばよいのです。

私は「歯を抜かずに残す」ことが患者様にとってどんな場合でも最良であるかのうような現在の風潮に若干の疑問を感じています。目先のトラブルを回避したためにさらに多くのトラブルを抱えてしまった患者様を見うけることもあります。重要なのは「歯をなるべく抜かずにお口全体を健康に保つこと」なのです。

ここではあえて、「(状態の悪い)歯を抜かなければならない理由」をあげてみたいと思います。

歯周病の全身への影響
重症の歯周病を放置すること(具体的には重症で治療しても改善が望めない歯を抜かずにおいておくこと)は全身の健康に悪影響を与えることが知られています。たとえ痛みや腫れがなくても歯周ポケットの中では活発な生体反応が起こっています。また多量の歯周病細菌が血管を通して生体に浸入しています。
「歯周ポケットの中で何がおこっているのか?」参照

かみ合わせの治療ができない
重症の歯周病にかかり動いている歯ではかみ合わせの力に対抗することができません。重症の歯周病を安定した状態にするためにはかみ合わせの力をコントロールする必要があります。重症で将来が不安な歯を残したままではかみ合わせのコントロールが十分に行えません。

歯槽骨を失ってしまう
歯周病を放置すれば歯の周囲の骨は確実に失われていきます。ひどい場合は歯を取り囲むように歯槽骨がなくなってしまいます。この段階で歯がなくなった場合、残された歯槽骨の量は非常に少なくなります。取り外しの義歯をつくるにもインプラントをいれるにしてもこのことは大変不利になってしまいます。

歯を失うことは人体の一部をなくしてしまうことです。患者様の考えとしては大変受け入れがたい事です。そのことを考えれば「歯を抜く」ことを宣言する歯科医の立場は大変心苦しいものです。医師と患者との価値観の違いは必ずありますが、その溝をどううめていくかが重要でしょう。

 
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